経営コラム

医療介護の激動時代を乗り切るために

2017年11月17日
2018年度診療報酬改定において政府は、診療報酬の本体部分を微増、薬価部分を本体部分の増額分以上に引き下げる方針です。介護報酬は全体で小幅のプラス、基本報酬は引き下げられ、加算部分でそれを補填する形になるようです。
 
 医療においても介護においても、量的拡大の時代は終焉を迎え、質的向上を目指すというのが国の方針です。量から質へ。つまり、ただ医療や介護を提供していれば良いという時代は終わり、いかに回復や改善の効果を上げたかという、成果主義の時代がやってきます。
 
競争、淘汰の時代を勝ち抜くためには、まず時代の潮流を把握することが重要ではないでしょうか。激動の時代を乗り切るために知っておきたいトピックを3つ紹介します。
 
1.本格的な少子高齢化
 65歳以上の人口は2042年をピークに減少を始めます。ただし、同時に出生率が下がりますので、総人口は減少するものの、総人口に占める高齢者割合は26.6%(2015年)→38.4%(2065年)へと増加の一途を辿ります。高齢者が増加しますから、1人あたりの介護・医療費用は増加していきます。ですが、高齢者を支える労働力人口は減少していきます。限られた社会保障費と労働力を如何に効率的に分配し、この難局を乗り切れるかどうかが2025年問題を含めた日本の大きな課題とされています。
 
2.医療機関の機能分化
 高度急性期(大学病院や国立病院)、急性期(民間大病院)、回復期、慢性期、慢性期後の受け皿として介護医療院・老健・特養・有料老人ホーム・在宅etc。それぞれの役割が明確化されていきます。診療所(個人開業医)はゲートキーパーとしての役割を期待されており、高度な医療が必要な患者、そうでない患者を篩にかけることが求められます。
 入院期間の短縮もさらに推し進められます。高度急性期病院に入院しても、手術や治療を終えたらすぐに退院し、在宅か次の病院や施設へ移らなければなりません。そのため、国は地域包括ケアやサ高住の普及に力を入れているのです。重症の患者でも在宅で生活するケースが増えてきますので、訪問診療、訪問看護の需要は高まるでしょう。
 
3.慢性的な人材不足
 厚生労働省は、2025年に不足する介護職員は約38万人にのぼると推計しています。政府は「ニッポン一億総活躍プラン」と銘打ち、介護職員の処遇改善など様々な施策を打ち出しています。前述したように、少子高齢化の波は急速です。他の業界とも労働人口の争奪戦が繰り広げられることになります。
 平成29年11月1日に施行された技能実習法に基づく、外国人実習生の受け入れも視野に入れなければなりません。外国人実習生であれば日本人より低額の賃金で受け入れられるのではないかと考えがちですが、法律で日本人と同等(最低賃金も適用あり)の報酬を支払わなければならないと規定されており、申請にかかる費用(申請委託費や手数料など)を考慮すれば、日本人を雇うよりむしろ高くなるという点には留意が必要です。それでも、外国人実習生を受け入れざるを得ないほどの人材不足が到来すると予測されているのです。
 
今回は3つの重要なトピックをご紹介しました。ご自身が勤めている(もしくは経営している)医療機関や介護事業所が、国の求めるどのポジションに位置づけられるかを常に考え、時代に乗り遅れないことが肝要です。