「かかりつけ医」のあり方
秋も深まりを見せはじめ、赤く色づく木々もちらほらと見かけるようになりました。
11月の紅葉本番が待ち遠しい今日この頃です。
京都には、老若男女問わず多くの観光客が紅葉を観に訪れます。
お年寄りになっても元気に観光ができる。これも日本が良質の医療を誰もがいつでも低額負担で受けられる、医療と社会保障制度発展の賜物だといえます。
2017年10月4日の社会保障審議会・医療保険部会にて、かかりつけ医以外を受診した場合の一部負担金導入が見送られ、紹介状なしで病院外来を受診した場合の定額負担対象拡大は今後も継続する方向で話し合われました。
日本は、保険証さえ提示すれば、自分が診察を受けたい病院や診療所を自由に選ぶことができます。医療のフリーアクセスです。
日本人は大病院志向だと言われていますが、それも仕方のないことです。自分の症状に対し、どの病院、どの診療科が適切な医療を提供してくれるだろう。そういう情報を一般の人々が十分に得ることは困難です。分からなけらば、「とりあえず大きい病院に行ってみよう」と思うのが一般的な心理でしょう。
そのことが、大病院の外来を大混雑の憂き目に曝し、本当に高度の医療を必要としている患者を十分に診ることができないという望ましくない状況を作り出しています。
平成28年度から、紹介状なしに特定機能病院や一般病床500床以上の地域医療支援病院を受診した場合、選定療養として定額(初診5,000円、再診2,500円)の負担が必要となっていますが、これも大病院への患者集中を抑制するための国の施策であります。
2018年度の診療報酬改定においては、この定額負担の範囲拡大が検討されています。今後は、一般病床でも200床以上あれば定額負担の徴収義務が求められるようになると予測されます。
この議論はつまり、いかに「かかりつけ医」の機能を強化し、普及させるかという観点であります。大病院に集中する患者を、どうやって診療所や中小病院に流すかが課題とされています。
診療所や中小病院のかかりつけ医が「ゲートオープナー」として、患者の状態や価値観を踏まえて診察し、必要に応じて適切に大病院へ紹介する。大病院で治療を受けた患者が地域に戻り、再びかかりつけ医に通院する。この紹介、逆紹介の適切な循環が、かかりつけ医と大病院の連携であるというのが国の考えです。
海外の話になりますが、イギリスにおける「かかりつけ医」機能はかなり進歩しています。イギリスでは、市民自らが登録した地元の総合診療医(GP)を受診しなければ、上位医療機関を受診することができません(救急の場合は除く)。もしGPを受診せずに上位医療機関を受診すると、その医療費は患者が全額自己負担することになります。GPの収入の多くは人頭払いであり、一定の収入が確保できる一方、医師のコスト意識を促す仕組みになっています。将来的には、日本もこれに近い仕組みにしていきたいというのが、医療費削減を推進している国の考えでしょう。
今後、外来の機能は大病院から診療所、中小病院へと移行するような誘導策が採られるでしょう。2018年で定額負担の範囲がどこまで拡大されるか、注目すべきところです。2018年度の診療報酬改定では、「かかりつけ医」以外の医師を受診した場合の定額負担導入は見送られましたが、それも国民の理解が得られ次第、実現されるでしょう。
この動きは、個人開業医にとっては患者獲得に繋がる追い風になる一方、市民のかかりつけ医を選ぶ意識が高まり、評判の良いところ、悪いところで格差が拡がる懸念もあります。
開業を検討されている医師の皆様には、上記の流れを踏まえた計画が必要です。
ご相談は杉田総合経営センターまでお気軽にご連絡ください。
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